アフリカのFintech投資

先日、アフリカの未電化地域において活動するスタートアップ企業をいくつか紹介した。この投稿の中で出てきたような、非常に社会的意義の高いソーシャルビジネスを行うスタートアップも当たり前のように外部からの、特に先進国からの資本がはいっている。


アフリカのスタートアップといっても正直誰もよくわからないのが現実なんだと、色々な方と話しながら強く感じた。上記のような現地の課題解決型のビジネスは、日本やアメリカにおいて何か実用的なインサイトを得るものではない。というのは残念ながら事実である。そこで今回は、より世界的なスタートアップトレンドに沿った分野であるFintech領域のアフリカスタートアップを紹介したい。


目次:

アフリカにおけるFintech投資

先進国のFintechとの違い

African Fintech Awardsのスタートアップ6社



アフリカにおけるFintech投資

そもそもアフリカのFintechってどうなの?流行ってるの?という方も多いと思うので下記の記事を見て欲しい。


The African Tech Startups Funding Report found that fintech firms accounted for $55 million (29.6%) of the total capital invested in new African companies.
Disrupt Africa が発表した The African Tecxh Startups Funding Reportによれば、2015年のアフリカスタートアップ企業への投資総額$185millionのうち、$55millionの約30%がFintech企業への投資だった。


これはかなり驚くべき数字といってもいいかもしれない。 というのは、Accentureが発表した"Accenture Fintech Evolving Landscape"から抜粋した図をみてみると


日本における2015年のFintech領域への投資額は$65millionであり、いくら国ではないとはいえアフリカと大きく違わないのだ。


先進国のFintechとの違い

こう比べてみると、先進諸国と同様にアフリカにもFintechの波が来ていることがわかる。

ただし、アフリカにおけるFintechを考える上で頭に入れなければいけばいことがいくつかある。その中でも特に注意したいのはGoodwell InvestmentのFounding Partner, Wim van der Beekが言うように、

he fintech space in Africa is different to that in developed economies, with a whole raft of opportunities presented by unique factors that are not found elsewhere in the world
アフリカのFintechは、世界の他のどこにもないユニークな要素によって提示される多大なチャンスという点で、他の先進諸国のFintechとは異なる。

ということである。

どういうことか? 


この記事の中で、Wim van der Beek氏は5つの要素を挙げている。

1.アフリカFintechは何もDisruptしていない。

先進国におけるFintechはこれまで伝統的な金融機関が担ってきた金融サービスをUnbundleし、より最適化され付加価値の高い代替サービスを提供していくものであるが、アフリカにおいてこのDisruptされる対象がいない。

2.Sector Convergenceにおけるリード

何もないが故に、異業種からの参入が用意、かつ必須となる。ケニアの大手MVNOであったSafaricomがM-pesaで当に天下をとったような事例が起きうる。また前回紹介したM-KOPA solarのようにソーラー発電機器の販売業から、Consumer Financeの領域へと舵をきる例もある。

3.Big Dateが大きなgamechangerであること

これから2050年までの人口増加の約半分がアフリカで起こり、インターネットインフラという意味でもネットから排除された人々の数は計り知れない。これまで知るよしもなかったアフリカの人々の購買行動などが、モバイルの普及とともにデータ化されるとしたら、、、、

4.テクノロジーの組み合わせによってイノベーションが加速していく

5.最大規模のマーケットは未だにUnservedである。

大陸の全人口のうち80%の約3億3000万人は依然フォーマルな金融サービスへのアクセスがない。これはつまり潜在的な顧客がこれだけ多くアフリカにいることを意味している。



以上の要素を頭に入れた上で、次に2016年のAfrica Fintech Awardを勝ち取った6社について紹介していく。


1.cellulant www.cellulant.com

領域:Payments & Transfer

2004年にケニアで二人の起業家、 Ken NjorogとBolaji Akinboroがわずか$3,000の資金で始めたCellulanthはモバイル向けのソフトウェア開発会社。開始から3年目には、アフリカ初となるモバイルバンキングのインターフェース開発を成功させ、この分野で最も有名なスタートアップになった。現在では、50を超える銀行、40の通信会社、300を超える企業と提携して、アフリカ12カ国に展開している。


2. the Sun Exchange

領域:Blockchain & Bitcoin

 The Sun Exchangeは太陽光エネルギーのクラウドファンディングを展開している。支援者はオンライン上で好きなプロジェクトを選択し資金提供する。集められた資金で太陽光発電に必要な資材を購入すると同時に、それをプロジェクト発案元である病院、工場、学校などのクライアント先にリースする。


3. OVAMBA

領域: Lending & Financing

マッキンゼーやデロイトなど一流企業出身者が立ち上げたOVAMBAは硬直的な銀行の融資サービスと起業家の資金調達という課題を解決するためのビジネスである。2013年にカメルーンからスタートした同社は強みであるファイナンスとテクノロジーに加えて、現地に密着したチームによる徹底した情報収集で、適切にリスク管理し、融資スピードの改善をしている。2014年にはUKのGLI Financeから資金調達、さらに今年には日本のCrowdCreditから調達をしている。


4. FNB(First National Bank)

領域:Incumbent bank


5. EasyEquities

領域:Invest Tech

Invest Techという言葉は実は初めて聞いたのだが、このEasyEquityは最も簡単な株式投資のオンラインプラットフォームを目指している。日本でこれに近いのはOneTapBuyだろうか。端株を用いて、株式の購入にかかるコストやリスクを低くし、投資を促進する。


6. BaoBaB

領域:Retail Banking

Serving more than half a million clients in 10 countries with more than 130 branches and 3000 staff, Microcred has a strong focus on Micro & SME finance. In addition to its core Micro & SME business, Baobab is Microcred's digital finance solution for financial inclusion. With Baobab, Microcred offers financial services to emerging client segments, particularly the unbanked, with a focus on Micro & SMEs. Baobab / Microcred was created in 2005 by Arnaud Ventura, its current President & CEO.​ The Group is one of the few global financial institutions that has been able to deploy a cost-effective model to address the issue of Micro & SME financing globally. Main partners include PE Funds such as APIS and global financial institutions such as AXA.


上記のように見ていくと、アフリカで新たな金融サービスが数多く立ち上がる理由として最も大きく、これらのスタートアップのインセンティブとなっているのは、その市場の大きさとポテンシャルなのではないかと思う。

というのも、先進国の人口が減少の一向を辿り、アジアも近い将来それに続く一方で、アフリカでは今世紀末まで人口増加が続くと予測されている。現在、世界人口は73億4947万人で、このうちサハラ砂漠以南アフリカ(サブサハラ・アフリカ)の人口は9億6229万人だった。世界人口に占める比率は13.1%だから、おおよそ全人類の7~8人に1人はサブサハラ・アフリカの住人ということになる。これが今から35年後の2050年の世界人口は97億2515万人で、このうち21.8%に当たる21億2323万人は、サブサハラ・アフリカの住人になるという。つまり、人類の5人に1人はアフリカのサハラ砂漠以南に住んでいることになる。


この人口爆発はtoCビジネスにとってはまさにチャンスでしかない。加えて、Unbankedという要素が絡んできている。つまり、既存の金融サービスを享受することができていない人々がサブサハラアフリカには約4億人おり、彼らがモバイルを手にし始めた現在、日本の2012年のように、スマホやモバイルに最適化された金融サービスを提供することで一気に顧客を拡大できる可能性がある。個人的にここら辺は日本や先進国も学ぶべきものが多いのではないのかなと思ったりする。



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