アフリカ注目のスタートアップ①:Mergims


今回はアフリカ、ルワンダで最もホットなFintechスタートアップの一つであるMergimsについて紹介する。いくらICTに力を入れているルワンダでも、このMergimsほど大きく成長して行く可能性を持っているスタートアップは正直ないので、ぜひ注目してほしい。



<目次>

Mergimsとは

Mergimsのビジネスモデル

アフリカ系ディアスポラと国際送金市場




Mergimsとは?

Mergimsはルワンダ発のモバイルペイメントのプラットフォームを提供しているスタートアップである。


いやいや、モバイルマネーが先進諸国とは比べ物にならないほど発展しているアフリカで、わざわざモバイルペイメントなど、、、、と思う方もいるかも知れない。しかし、このMergimsが狙っているものは全く異なる。実は彼らの提供するプラットフォームは、海外に移住しているアフリカ系のディアスポラを主張なターゲットユーザーとして想定している。後に見て行くが、この海外のディアスポラとそこから流入する国際送金は非常にアフリカ経済において重要かつ、課題の多いテーマであり、Mergimsのサービスはまさにここに価値を提供して行くサービスであると言える。


Mergimsは2015年2月に創業者のMuhire Louis Antoineによってスタートしたばかりだ。もともとMuhire自身が1994年のジェノサイドの際ににカナダへ移住し、20年余りを海外で過ごしてきた。しかし親戚や家族の多くが依然としてルワンダに残っている中で、母国のために何かできないかと考え、このビジネスを思いついたという。 

*このような形で国外に出た優秀な人材が国に戻り、役職についたり事業を起こすことはアフリカでは非常に重要な役割を担っている。


2015年9月に世界最大の途上国スタートアップ向けピッチイベントのSeedstars Worldのルワンダ開催で優勝、今年の夏にはImpact hub Zurichが運営するスタートアップアクセラレーターのKickstartのプログラムを受けてきた。

これまでにアフリカ23カ国に展開するCOMZAfricaのCEOから$50,000のエンジェル投資を受けたほか、Africa Angels Networkからの$20,000 など累計で$160,000の資金調達をしており、現在はシリーズAでの大型調達を目指している。



Mergimsのビジネスモデル


先ほど述べたように、Mergimsの主なターゲットは、海外に生活するアフリカ系ディアスポラである。多くの場合、彼らには家族や親戚などが母国にいて、いわば出稼ぎのような形でディアスポラの海外での稼ぎにある意味依存している。


毎年非常に多額の資金が送金される一方で、その国際送金コストは非常に高い。また、総金額の90%は急を要するような少額の支払いである事実は、送金コストと相まってディアスポラに多大な負担をしいている。


そこでMergimsは、送金者がモバイル上で送金相手・使用目的を決めることができ、かつ送金者は一切のコストを支払わないサービスを構築した。


学校の学費を例に考えて見る。海外に住む送金者の妹の娘(姪)が学校に通っていたとする。普段はこの妹が働いた稼ぎで学費を払っているが、ある月、何かの事業で仕事をクビになってしまい学費を払えない状態になってしまった。この時、妹は送金者に対して代わりに支払うことを依頼したとする。

これまでならば、送金者は既存の金融機関などでまず妹に対して送金をし、今度は妹が銀行でお金をおろして支払いをするといった流れだったが、Mergimsを使えば僅か30秒足らずで学校への支払いを済ませることができる。しかもコストがかからない。


ではどうやってMergimsは収益化させているのかというと、ポイントは2つあるように思える。

まず一つ目は、既存の金融機関と送金依頼者(この場合妹)という仲介者を取り除いたことである。

そして二つ目は、これまで送金者負担だったコスト分を支払いを受ける側(学校)へと転嫁したことだ。

1つ目に関していえば、昨今のFintech国際送金分野の多くのスタートアップと同じであり、特別ここで述べることはない。注目すべきは二つ目で、アフリカでの家計所得について、他者からの送金が占める割合が少ないとはいえないために、受金側の企業や病院、学校などはMergimsの対してFeeを払うことが成り立つのである。




アフリカ系ディアスポラと国際送金

一体どのくらいMergimsが狙う市場は大きいのだろうか。

今回はアフリカ系ディアスポラの人口とアフリカへのレミッタンス総額を見て、その規模にイメージを持ってもらう。


まずは人口。。。

世界銀行によれば、海外にいる正確なアフリカ人の数はわからないがおおよそとして、北米地域に3900万、南米地域に1億1000万、ヨーロッパには350万とされており、非常に多い印象を持つではないだろうか。


次にレミッタンスをみていく。。

通常、途上国開発の議論の中で貧困層の家計キャッシュフローに注目するとき、必ずと言っていいほど家族や親戚からの仕送り(レミッタンス)が含まれる。

*この点について詳しく知りたい方は、最底辺のポートフォリオを読んでいただきたい。


特に途上国の場合、国際間でのレミッタンスも顕著で、実際にマクロ的な観点から見ても途上国諸国に流入する資金の種類として、海外直接投資FDIに次いで二番目に大きな資金の流れとなっている。(下図)

アフリカ個別で見てみると、意外に思えるかも知れないが、実は最大の資金源はFDIでも援助マネーODAでもなく、このレミッタンスであることがわかる。世界銀行によれば、2015年の段階でアフリカ大陸の外から各国にディアスポラによって送金された総額は$32.2Bn( 約3900億円)であるとされる。(下記の図とは計算が異なるので値がずれる。)


一方で課題の一つでもある送金コストを地域別で見て見ると、下記のように対アフリカ向けの国際送金は非常にコスト高なことがわかる。



以上見てきたような背景を大きな課題・チャンスとして、ルワンダ発のFintechスタートアップは国際送金分野で今後大きく成長していくことが見込まれる。(期待している)

最後にいくつかMergimsについての動画を載せたので、ぜひ!!



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